好きで、好きでたまらないんだ。











be my last...











「じゃあ、俺はもう帰ろうかな」
 内山が口に手を当て、欠伸を堪えた。
「泊まるんじゃなかったのか?」
 先ほど用意したコーヒーに口付けていた慎が、目を見開いて視線を向ける。
「あー・・・そうだっけ?」
「・・・お前、来た時言ったろ」
 ぶすりとした声に少し驚きながら内山は、携帯を慎に見せた。
「わりぃ、メール来た。晩酌に付き合えってさ。さっきまで出てけってすげー剣幕だったのに」
 内山はくすくすと笑いながら立ち上がる。母親の事などお見通しで、「出ていけ」と言われても30分後には機嫌が直るのも解っていた。
 そんな親友を見て、慎は「気をつけて帰れよ」と素っ気なくも穏やかに言う。
 内山は、「大丈夫」と頷くと緩ませていた顔を引き締めた。

「・・・慎、俺らの事頼れよ?」
「・・・ああ」
 一瞬戸惑う。
 内山たちを信頼していないわけないのに。けれど、慎は人に頼る事に未だに慣れていない。
「サンキュ、な」
 内山が母親との喧嘩を口実に自分に会いに着た事くらい気付いていた。
 そんなに自分は余裕の無い様子を見せていたのかと少し焦ったが、親友の気遣いに素直に感謝した。


「慎はさ、ヤンクミの中の特別だと思うよ」
「・・・」
「だって俺らヤンクミん家に呼ばれた事ねーもん」
 内山がくしゃりと顔を歪ませて笑う。
「今の距離だって、充分特別だよ」
 まあ、勿論今のままで満足出来るとも思わないけど、と付け足した。
 慎は天井を仰ぎながら、言葉を返す。
「生徒と教師である以上、それより先には進まないけどな」
「・・・」
「ヤンクミはそういう奴だよ。・・・じゃなきゃ、山口久美子じゃ、無い」






 で、も。




 理解って。
 気付いて。




 ジレンマ。






「なあ」
「大丈夫」

 内山の言葉を遮るように、コーヒーの最後の一口を飲み干して、平静を装った。
「慎、ヤンクミに劣らず結構無茶な事すっから」
 呆れ半分な顔振り返りながら、内山はドアノブに手をかける。
「お前らホントに似た者同士だよ・・・」
 小さく呟いた親友の言葉をさりげなく聞かなかった事にして、慎は内山を「じゃあな」と見送った。






 ぱたり。
 ドアの締まる音が無機質に響いて、静まり返った部屋で頭を抱えるように俯いた。






「・・・きだ」

 自分でも解らない。
 このままでいたいのか。
 進展したいのか。






 ただ、そこにある真実は、山口久美子が好きだと言う事だけ。






「好きだ・・・」

 口にするだけで、安心出来る気がした。






















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