決意の時











 硬いベッドの上に、疲れ果てた体を沈めた。

 夜はひんやりした風が頬をくすぐる。
 乱れた髪をかき上げた。金のメッシュもなくなって、黒い髪も短くした。

 毎日が充実して、学校で出会った奴とは違う仲間が出来た。

 いつも涼しい顔してるよな、と言われ続けた自分が汗だくで土まみれになっていると知ったら、周りは笑うだろうか。





 最近、一人の少女が自分の後ろを付いて来る。
 この前やっと完成した学校に通い始めた少女。勉強をするのは初めてで、アルファベットの読み書きから習い始めた。

 教師も、数が足りずに免許だなんだと言ってられる状況ではなく、自分も教壇に立って読み書きや簡単な計算を教えた。


 手を上げて、質問して。
 正解した時は大はしゃぎして。


 楽しそうに学校に通う少女を見て、あいつと共にいた自分を思い浮かべた。







 やっぱりお前が好きなんだ。
 お前が必要なんだ。







 頭があいつで一杯になる。気持ちが薄れる気配など微塵も無い。

 あの子、シンが好きなんだぜ!初恋だとさ、と地元のボランティアチームのリーダーに言われた。
 嬉しかった。
 きっと彼女は学校に行けて、学ぶ楽しさを知って本当に幸せなのだろう。その手伝いが出来たのだ。感謝されたのだ。


「私、シンが好きなの」
 少女はある日、面と向かって告げて来た。
 可愛い初恋。
「ありがとう」と、優しく言った。
「ごめんな、お兄ちゃんには、愛してる人がいるんだ」
 こんな小さい娘に言うのもどうかと思ったのだが、本当の事を口にする。ここに来て、改めて実感した愛情だから。

「シンの大好きな人にいつか会わせてね」
 少女の言葉に頷いた。





「会いてぇな…」





 会いたくて、会いたくて堪らない。
 もうすぐ夜が明ける。硬いベッドから体を起こし、しばし考えた。

 やるべき事はやった。
 自分の糧になった。

 もう。




「…久美子」
 初めて名前で呟く。愛しい人の、名前。
 2年ぶりに、故郷の地が踏みたい。














我慢出来ずに切符を買った。















fin

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慎がアフリカから帰る時。

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