軌跡











「・・・おつかれ様」
 ベッドに横たわる久美子に、優しく慎が口を開いた。


「・・・アリガト、慎」
 少し、疲れの残る白い顔で、久美子は慎の目を見つめて言う。



「ちょっと、感動した。母親って凄いな」
 少し顔を歪ませて笑みを浮かべながら、慎は久美子の手を握り締めた。



「凄くないよ。だって慎がいなかったら、アタシは母親になれなかったんだから」
 首を傾けて、自分の傍らで眠るわが子に久美子は視線を移した。





 ついさっき産み落とされた、新しい命。
 慎と久美子は、今日、人の親になった。





 二人はそっとわが子を見つめ、そして優しく目を合わせる。
 心にじんわりと、温かいものが染み渡った気がした。






「なあ、枕元に置いてるその箱・・・何なんだ?ずっと気になってたんだけど」
 慎が、急に話題を変えた。

「ああ、これか?」
 久美子は手を箱へと伸ばす。






「アタシの宝物だよ」






 ゆっくり起き上がり、そっと蓋を開け、慎に箱の中身を見せた。































































「え・・・?」



 そこにあったのは数々の写真。

 慎と、久美子の、軌跡。







「今までのアタシ達がいて、今のアタシ達がいる・・・そして、この子がいるから」







すっかり母親の顔をした久美子に、慎はありったけの想いをこめて、口付けた。













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ありがとうございました!!!

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